1)同一労働同一賃金とは

最近の労働関係の注目事項としては、ハラスメントや採用身分などが取り上げられていますが、同一労働同一賃金も様々な場面で取り上げられるようになってきています。

というのも、1990年代から経営がグローバル化して、それまでの経営価値観とは一変したことがそもそものことになります。

世界の企業との競争ということもあり、多くの企業が経営指標を良くすることに迫られるようになったのです。

00率とか、00指標ということが最優先事項で取り上げられ、その数値を少しでも良くすることがイコール経営力という評価となったのです。

その結果、取締役再選とか、代表取締役の再任というようなときの物差しにも使われることになったので、企業の経営トップとしてはあらゆる手立てを講じてでも経営指標を少しでも良くすることに没頭するようになります。

短期的な業績ということも従来よりもかなり重要視されるようになったのです。

そうなると、目先の費用や設備というところにメスが入ることになります。

会社を支える従業員の人件費も聖域ではなくなり、改善できるものは改善するという方向になったのです。

その結果、固定費で大きなウエイトを占めていた正社員の人件費が改善すべき対象ということでクローズアップされました。

 

2)契約社員やパート・アルバイトといった雇用形態が多くなった

結果として、いつでも入れ替えが可能な人を雇うというということで、正社員に代わって派遣社員がたくさん雇われるようになり、契約社員やパート・アルバイトといった雇用形態が多くなったわけです。

もともとの目的が人件費を少なくするという発想ですから、派遣社員、契約社員、パート・アルバイトに対する処遇は正社員よりも少なくなります。

仕事は全く同じでも、賃金には差がつくということなのです。

そうでなければ、派遣社員・契約社員、パート・アルバイトとして雇うという意味もありません。

こうしたことから、どこの企業も全部ということではありませんが、人件費圧縮だけを目的とした人事政策が横行したわけなのです。

その結果、実際に働く人たちの間では、同じ仕事をしているのに賃金に差がつくという不満がたまっていくこととなります。

現場サイドで見ると、正社員よりも質の良い仕事をする他の雇用形態の人も多くいるという状態も起きてきます。

このようなことから、同一労働同一賃金にすべきだという主張が強くなり、その方向に日本全体が向かうことになりました。

 

3)同一労働同一賃金がもたらす問題点とは

悪いこととは言えないのですが、表面上だけの同一労働同一賃金ということになると、根本的な問題が解決されていないので、今度は違う問題が発生する恐れがあります。

それは正社員とその他の社員の位置づけの根本問題や、企業は社員を採用する際の根源をきちんとするということです。

同じ労働をすると言っても、生涯をかけてその企業のために働くという人と一時的に給料をもらうために働くという人では、長い目で見た貢献度というのは自ずと異なってきます。

目の前の仕事としては同じことであっても、将来向けた問題対策や考え方を持っているかどうかでも、異なってくるはずなのです。

つまり、かつての一時しのぎ的に行った人事政策が生み出した課題を、また一時しのぎ的に同一労働同一賃金でしのごうとしても、今度は次の新しい課題が生まれてしまうのです。

だからこそ、表面上のことを処理して、問題を鎮静化しておしまいにするわけには行かないということになります。

根本的な解決は、民間企業だけではできませんし、経済界全体でも難しいことです。

国も一緒になって、先行きを見据えて解決しなくてはならない問題です。

経済の成長率とか、雇用関係の指標などだけで論議しているのでは、経営のグローバル化が生みだした経営指標第一主義の弊害と同じことが起きてしまいます。

二の轍を踏まないように、腰を据えて、日本全体で取り組む必要があると言えるのです。